1979年にアルビン号が発見した「奇跡の生物」。口がなく、餌を食べない。体内に特殊なバクテリアを蓄え、深海に噴出する熱水中の猛毒「硫化水素」から栄養を作り出す。
発見当時は分類上の所属が不明なことから、チューブ状の棲管に入り、入り口から頭を覗かせる姿そのままの名前で呼ばれた。和名はハオリムシ(羽織虫)。
体長は数十cmほどで先端には紅色のハオリをもつ。口・消化管・肛門などの消化管等をもたず、硫黄酸化細菌と細胞内共生している。ハオリから硫化水素等を取り込み細菌に供給し、細菌は有機物を供給している。
しかし、チューブワームが生息している場所は必ずしも硫化水素が豊富に含まれている海水ではない場合もあり、また海泥には硫化水素が豊富にあってもそこから硫化水素を取り込んでいることは確認されていない。そのため、体内に複数の細菌を棲み分けており、それらの細菌を使って硫黄の酸化・還元反応の両方が行われているとする科学者もいる。これと似た代謝系を持っている生物としてはシロウリガイがいる。だがそれでもその生理・生態は不明な点が多い。
1977年、ガラパゴス諸島沖の深海で、潜水艇「アルヴィン号」により発見される。発見当初、その様子のあまりの異様さと、しばらくはその分類学上の位置が決まらなかったことからそのままチューブワームと呼ばれ続けた。有鬚動物門のハオリムシ綱に分類されたが、現在では環形動物門多毛綱のシボグリヌム科に含める意見になっている。
もっとも浅いところに生息するチューブワームは、日本の九州鹿児島湾にて、深度100m以上の浅い海で生息しているサツマハオリムシである。
自由生活の左右相称動物でありながら消化管がほぼ完全に欠如しており、栄養は共生細菌より得ている。ハオリムシは浅海や地上の光合成生態系とは独立に、深海底で化学合成に依存する生態系を作り、しかも高密度であることで注目を集める。また、動物分類学の歴史においても興味深い一群で、20世紀初頭の発見当時はシボグリヌム科と名付けられ科の階級に置かれたが、特異な体制が知られるにつれリンネ式分類の階層で3階級引き上げられ、門の地位に置かれた。神経は背側にある解釈で後口動物の1つとされた。しかし、完全な体の発見と分子系統学の研究結果などで環形動物の小グループであることが明らかになり、数十年を経て当初の階級および名称のシボグリヌム科に戻された。背腹も逆に解釈されていたことが判明した。
海産の細長い動物で、底生(大半が深海底)である。
口も肛門も、消化管一切が存在しない。普通に自由生活でありながらこのように消化管を一切持たない例は珍しい。
虫体よりかなり長い円筒形のキチン質の棲管を作り体の前部を外に出す。虫体は非常に細長く、太さ0.5-30mm、長さ5cm-3mで、大きく4つに分かれる。前から前体・中体・胴部・後体あるいは頭葉・腺領域・胴・固着器官などと呼ぶ。 前体はハオリムシでは殻蓋部とハオリ部になる。殻蓋部の先端は広がっており、基部の周囲には鰓がある。 中体は表面のクチクラに手綱と呼ばれる隆起がV字にある。 胴部は非常に細長く、乳頭状突起と種によっては剛毛があり、共生細菌が存在する。ハオリムシでは栄養体と呼ばれる。これは消化管(内胚葉)起源であると考えられていたが、中胚葉性であるらしい。 終体は短く体節に分かれ、節ごとに剛毛が配置するなど、多毛類の体そのものである。
閉鎖血管系を持ち、背腹に血管、頭葉には心臓がある。ハオリムシの血液中の細胞外ヘモグロビンは、酸素に結合する能力もあるが、硫化水素とも結合できる。
ヒゲムシで触手、ハオリムシで鰓と呼ぶ器官は前体より起り、ヒゲムシでは1本から200本、ハオリムシでは時に数千本あり、その配置も馬蹄形、円形、螺旋形等のものがある。内側にはさらに細い小枝(しょうし)あるいは羽状突起と呼ばれる突起が2列並んでおり、それぞれの突起には血管が入り込んでいる。そのため触手/鰓はヘモグロビンを持つ血液のために赤みを帯びて見える。内側の面には繊毛が並んでいる。
雌雄異体、有対の生殖巣が胴にあり、雄は精包を作る。